逮捕された日の午前中、我々団への入団者のために”入団時必読文献”を数セット買い揃えようと私は熊本市内の本屋を回っていた。それで、逮捕された時、私のバッグの中には『愛と幻想のファシズム』が3セットも入っていた。
獄中、特に留置場というのはヒマなので、久しぶりに『愛と幻想のファシズム』を読み返している。
1,2年前にパラパラと読み返した時にも、例えば作中のファシスト党<狩猟社>の武装親衛隊<クロマニヨン>が街宣車で大音量のピストルズを…というくだりでひっくり返ったが、じっくり読み返している今回はもっと驚く事がある。
以下引用。
* * *
「僕の考えでは、人類はその最終的な形態をとろうとしておるね」
「この大不況のことですか?」
「洞木君、不況はいずれ収まるよ、たぶん戦争も内乱も起きないでしょう、
すべては、経済が要求するのです、芸術も戦争も革命も、経済が要求するのです」
「経済が今何を要求しているのですか?」
「人類の最終的な社会形態を要求しているのです、それが成立するまでは、戦争はおきませんね」
「最終形態って?」
「世界国家ですよ、約三百五十万年前に始まった人類の歩みがいよいよ最終段階に入るわけです。あなた方はそれに反逆しておる、そうだ、反逆しなくてはいかん、僕は手を貸しますよ、
人を殺してもかまわない、今夜のように人を廃人にしてもよろしい、世界国家などというものには反逆せねばならん、ヒトラーもムソリーニもある意味では反逆した、だが負けてしまいましたね、
あなた方はどうだろう、どうであれ、僕はトウジさんを応援します」
* * *
私のファシズム論にきちんと目を通している物はやはり私と同じように驚くだろう。
無意識のうちにここまで影響されていたかと一瞬焦った。が、考えてみれば当然のことだ。マルクス主義とファシズムの双方をよく理解していれば誰にでも到達できる認識だ。ただそういう人間はほとんど稀だし、私も村上龍氏もそんな希少な存在であるというだけだ。
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