獄中短歌「百回休み」003
刑事さん その段ボールは開けな……うわっ、ブックマークもチェックしないで

 何の場面を詠んだのかお分かりですね。
 そう。家宅捜索である。
 私は自宅で寝ているところを叩き起こされ逮捕されたのだが、その時ついでに家宅捜索もおこなわれた。
 刑事たちが山積みの段ボールを手当たり次第に開けていく。私はモノ、とくに本や雑誌をなかなか捨てられない人間で、だから十代の頃から貯めこんでしまったエロ本のコレクションなんかもあって、さすがにアダルトビデオが一般化した今ではあまりエロ本にはお世話にならないから、段ボールにしまってあったりする。刑事の手がその問題の段ボールに伸びる。「いや、ちょっと、それは……」という場面である。
 パソコンの「ブックマーク」ももちろん、ここで焦点化されているのはエロサイトへのそれ。
 しかしよく男同士、「死ぬ前にエロ本やエロビデオを処分しとかないと、後で家族とか彼女とかに発見されるかと思うと死んでも死にきれない」という話題になるじゃないか。逮捕も同じだ。〇二年の逮捕の時には、拘束が長引きそうだったので(結果的には二年間)代理で部屋を引き払いに来た父親にそれらを見られたはずだし、〇七年の逮捕では、私のスタッフ(しかも女性)に見られた。それでも私は生きている。もう怖いことなんか何にもない。