『人民の敵』第8号(2015.5.1発行)


コンテンツ1
〈座談会〉外山恒一を
(どくんご関係者で)囲んで飲む会
〈正規版“購読”検討用・抜粋〉


ヤッシー ……一度でいいから、外山君の“髪がある姿”を見てみたいな(笑)。
外山 初めて「どくんご」を観た年は、まだ髪があったよ。
ヤッシー ん? あ、そうか。
外山 最初は『踊ろうぜ』(01年)だから。
ヤッシー 髪を剃ったのは出所(04年)してからだったね。
外山 うん。
ヤッシー 思い出した。ちょっとチャラい……(笑)。
外山 たしか金髪でね。
ヤッシー 本間(東京の「どくんご」スタッフ)みたいな感じだった(笑)。
時折 本人を前にして云うのもなんだけど、初めて会った時は、ほんと困った奴だな、何だこいつは、って思ってたよ。
外山 ……すいません(笑)。
時折 いや、べつに責めてるわけじゃないんだけど。
早智世 王子の神社で一緒にバラシをやった覚えがある。
佐藤 おれが酒を飲みに行った帰りにスッ転んで骨を折った時?
早智世 そうそう。
時折 あれは『Deluxe』の時だろ? 外山君が初めて現れたのは、その4年前。
外山 いや、『踊ろうぜ』だから……。
時折 さらにその4年前か。
外山 01年。
時折 結構前なんだなあ。でっかいテントの時だったね。
外山 うん。昔のテントの最後の年。
時折 あの時点では“最後”にするつもりはなかったんだけどさ(笑)。
ヤッシー 南浦和の公演にも来てなかったっけ?
佐藤 いたね。南浦和じゃなくて東浦和。
外山 あれは『ベビーフード(の日々)』(05年)でしょ。
時折 最初に来た年って、九州だけだったよね?
外山 九州全部と、たぶん千秋楽に行ってる。やっぱり浦和かな?
時折 あの頃は、外山君は「風狂フーガ」(80年代の“第2次テント芝居ムーブメント”を象徴する劇団「風の旅団」から派生し、03年までテント旅公演をおこなっていた広島拠点の劇団)の福岡の受け入れだったんだっけ?
外山 いや、「魚人帝国」(「風の旅団」の京都受け入れを中心に結成され、90年代に数回のテント旅公演をおこなった劇団)のほう。ぼくは風狂とはあまり関係がよくなかったんだ。それでも97年以降、一応、風狂を毎年観てはいて、それで98年の風狂の福岡公演の打ち上げの時に、京都から魚人のラッキーさんと空天が来てて、ぼくがこれまでやってきた話とかしたら、なんかやたら面白がられて、来年の魚人の福岡公演の受け入れをやってくれないかってことになった。
時折 そういう経緯だったのか。
外山 魚人帝国の最後のツアーね、99年の。


時折 ……また期せずして“昔話”になっちゃってるな(笑)。
外山 最近そういう話をする機会が多いって云ってたけど、それはどうして?
時折 現場にいないからだよね。芝居やってる時は、毎回打ち上げで芝居の話をするけど、それはその時の自分の役に関する話とか、その芝居についてとか、リアルタイムの話がメインになるでしょ。打ち上げ以外では、飲み会に出る機会もほとんどないしさ。ところが現場から離れると、他の人たちの芝居の打ち上げで話す内容も、誰かに「あの役者は昔、どんな感じだったんですか?」とか訊かれたりして、「うん、あの時は……」みたいになることが多くて、自分でも、なんでこんな話をしてるんだろうって自己嫌悪になる。そういうことを話すのも嫌いじゃないんだけど、話してからしばらくして、やっぱり現場から遠ざかってるんだよなあ、って寂しい思いをするわけだ(笑)。
外山 ぼくが初めて「どくんご」のテントに登場したのは01年の『踊ろうぜ』の鹿児島公演で、たしか本番の前日か前々日にテントを訪ねて、それからバラシまで何日かいたと思うんだけど、その何日目かにテントの中で、ズンちゃん(時折氏のこと)に“テント芝居の歴史”をレクチャーされて……。
時折 そうだっけ(笑)。それはやっぱり外山君に訊かれたからだと思うよ。
ヤッシー それを聞いて、どうしたの?
外山 とくにどうしたわけでもないけど、その時のメモは残ってる。かなり詳細なレクチャーで、ムチャクチャ面白かった。
時折 オレが初めて外山君と遭遇した時の印象っていうのは……あの時、たしかクスリを飲んでたんでしょ?
外山 うん。睡眠薬と、抗鬱剤と。その後“2年間の投獄”に至る裁判がちょうど進行してる時期で、さすがのぼくもかなり追いつめられてたんだよね。裁判以前からもう2年間ぐらい、ずっとドロドロの状況が続いてたわけだし、とにかく人生最悪の数年間だった。
ヤッシー 入獄前だったんだもんなあ。
外山 法廷パフォーマンスで裁判官を怒らせたから実刑になっただけで、もともとたいした事件じゃないから、裁判も在宅だったんだよ。裁判前の、問題が本格的にコジれ始めたあたりで、生まれて初めて精神科の門を叩いて、睡眠薬と抗鬱剤を処方したもらった。自分では当時まったく自覚がなくて、いつもと同じつもりでいたんだけど、やっぱり異常な感じだったって福岡の友人たちも云ってるよね。たしかに当時のことは記憶も曖昧っていうか、断片化してるんだ。だから自覚がなかっただけで、実際かなりヤバい状態だったんだろうね。
時折 うん(笑)、いつもラリってる印象だった。話してみるととてもマジメだし、いつも「交流しよう!」みたいなビラをまいてて……。
外山 「だめ連」路線をやってた時期だしね。
時折 君の云うこともよく分かるし、内容的にはオレも賛同するにやぶさかではないが、もうちょっと落ち着けよ、って感じだった(笑)。たぶんクスリでフラフラしてたんだろうけど、立ち上がった途端にゴロゴロゴロって転げたりして、おいおい大丈夫かって(笑)。ほんとに困った奴だなあと。
外山 よく覚えてないけど(笑)、何かにつまづいたんだろうね。
時折 ちょっとトイレに行くとか云って立ち上がったかと思ったら、そのままゴロゴロゴロって……。
外山 いやいや、ご迷惑をおかけしました(笑)。だけどやがて裁判やってたのとは別の容疑でいきなり逮捕されたんで、まず警察の留置場からなんだけど、眠れないって云ってもなかなか睡眠薬を出してもらえないんだ。たぶんしつこく云えばくれるんだけどね。でもメンドくさくなって、どうせ留置場では1日か2日に1回、ちょっと取調べに呼ばれるだけで、とくにやることもないわけだし、眠くなるまで寝なきゃいいんだと開き直ったら、ほんの何日かであっというまに熟睡できるようになってさ(笑)。
時折 へー。
外山 その後そのまま2年、塀の中にいるわけでしょ。だから出所する時には完全にクスリは抜けてたよね。非常に更生の役に立った(笑)。
時折 そんで出てきて『ベビーフード』か何かで再会した時には……もう今の“グレート外山”になってて、ビックリしたよ(笑)。
外山 普通の人に戻れてた(笑)。
時折 普通っていうか、普通以上になってたよ。


時折 山陽道が全線開通するまでは、旅がほんとに大変だった。
ヤッシー 高速に乗ったり下りたり?
時折 いや、ずっとシタミチで行くんだよ。すぐ渋滞するし。
佐藤 今はカーナビがあるから、自分がだいたいどこらへんを走ってるか分かるじゃないですか。昔は地図で確認するしかないけど、初めて走る道は地図を見たって、どこ走ってんだか分からないんだよな。
時折 だけど距離感覚とか、地図を見て走ってた頃のほうが圧倒的に身につくよ。ナビに頼っちゃうと……。
外山 うん。堕落すると思うからナビは使ってないよ。
時折 偉い!(笑)
外山 今でも全部、地図で見て走ってる。
時折 オレは完全にナビ頼り(笑)。
ヤッシー あれだけ全国を回っててナビを使わないってのは、相当気合いが入ってるなあ。
外山 地図を見て走る方が楽しいと思うよ。時間に余裕がある時はわざと遠回りして、とんでもない山道を走ったりする。秘境っぽいとこに行くの好きだし。
ヤッシー 昔トラックで移動してた時に、“地図ではこうなってるはずなんだけど”みたいなヒドいとこに迷い込んだことがあってさ。沢を渡んなきゃいけないのに吊り橋だらけで、どうすんだよって(笑)。
時折 初期のツアーの頃は、地方に行くと未舗装道路も結構あったしね。「よし行ってみよう!」って、それなりに楽しかった。
外山 昔の角川映画で『湯殿山麓呪い村』(84年)っていう、横溝正史の二番煎じみたいなのがあったでしょ。山形かな、地図を見ながら走ってたら、近くに「湯殿山」ってあったから、「これか!」と思って遠回りして通ってみたら、雨だったのもあるけど……すげー怖かったね(笑)。
佐藤 他に誰もいないような道を真夜中に1人で走ってると、妙に怖いことがあるよ。
ヤッシー 山の中とかで、光がまったくないようなところはやっぱり怖いですよ。何が出てくるか分かんないし。
佐藤 昔、軽井沢あたりで芝居をやったことがあって、みんな別荘地に泊まってたんだけど、オレは次の日に仕事かなんかで、夜中に出発して1人で山道をダーッと帰ってきて、あの時は怖かったな。
外山 長野に大鹿村だかってとこがあって、まだ行ってないんだけど、行くといいよと勧められた。夜中に行って、テキトーなとこにクルマを停めて、ライトを消して2、3時間、寝るなり何なり時間を潰した上で、突然ライトを点けてみろって。大量のシカに取り囲まれてるんだって(笑)。上場(「どくんご」稽古場)の辺りもシカいるよね。大口方面に抜ける山越えの道が2本ぐらいあるでしょ?
ヤッシー ああ、あの細い道。
外山 いや、国道で。水俣と大口を結ぶ道と、出水と大口を結ぶ道と、2つあるのかな。4百何十何号線だか、夜中に走るとほぼ毎回シカがいるね。かなりでっかいやつ。
ヤッシー シカって1日5分しか寝ないんだって。
時折 そんなんで生きていけるんだ。
ヤッシー シカのいるとこでキャンプしたりすると、夜通しシカに威嚇されるんだよね(笑)。
時折 昔のツアーでは夜中の移動も結構あったんだよ。北海道のずーっと真っ直ぐな道でちょっとヘッドライトを消してみるのが、すごく楽しかった。
ヤッシー やめてほしいんだよなって伊能が云ってたよ(笑)。
時折 だって他の場所じゃできないんだもん(笑)。
外山 ぼくもそれ、どこかでやったことある。ちょっと真っ直ぐなとこで、ノロノロ運転でだけど……あれは怖いけど楽しい(笑)。
時折 シカといえば鶴居村だね。道東の、釧路からちょっと山に入ったところ。「どくんご」が何回も公演をやってる(95年、98年、01年、11年〜14年)。コンビニもないから、夜中にコーラとか飲みたくなるとAコープの前の自販機まで、真っ暗な道をクルマで買いに行くんだけど、毎回必ずシカの群れがいて、すぐ逃げるでもなく、「ああ、クルマね、はいはい」みたいな感じで(笑)、ゆっくり道を開けてくれる。地元の人は、とくに繁殖期とか、よくクルマでハネちゃうみたい。
ヤッシー 繁殖期のシカは怖いらしいですよ。
外山 石田みやが昨年、どこかで熊をハネたって(笑)。
ヤッシー 公演の間がちょっと空いてて、オフの日があって、何組かに分かれてキャンプしたみたいで、石川だったかな、キャンプ場に行く途中の山道で小熊をちょっとハネて、その後キャンプ場でめちゃくちゃ怖かったらしいですよ(笑)。
時折 それは怖いな。
佐藤 そんな大型動物をハネたらクルマも無傷じゃ済まないんじゃない?
早智世 暗い中をライト点けて走ってたら、熊が「わっ、何か光ってる!」みたいな感じでむしろ向こうから突進してきたみたいだよ。
佐藤 その熊も世間を知らなすぎだろう(笑)。
ヤッシー いっそそのまま捕まえてその晩キャンプ場で食ったっていうんならすごいんだけどな(笑)。
佐藤 きっと脂がキツくて大変だよ。
時折 ハネたシカも不味いっていうしね。
早智世 そうなんだ。
ヤッシー 血抜きしてないからな。……だけど鶴居村でも地元に人に「熊は出ますか?」って訊くと、「出る」って云うんだよ。森の中にテントを張ってるから、恐ろしいよね。
外山 札幌の公演場所の……。
ヤッシー 円山公園。
外山 あそこも何年か前に熊が出たんでしょ?
ヤッシー らしいね。だけど熊が出るよりヤクザが来る方がメンドくさい(笑)。
外山 ヤクザが来た時に熊が出るとちょうどいいんじゃない?(笑)