『人民の敵』第6号(2015.3.1発行)


コンテンツ2
〈座談会〉with 藤村修・本山貴春
〈正規版“購読”検討用・抜粋〉


藤村 今回の人質事件みたいなことが起きちゃうと、あの“中華ホメ殺し主義”には結構リアリティがあるってことになりそうだし、外山君は内心得意になってるんじゃないかと想像してるんだけど。
外山 うん、それはちょっとある(笑)。
本山 創刊号では他の3人から寄ってたかってケチョンケチョンに云われてましたね(笑)。
外山 目を覚ませ、正気に戻れ、って(笑)。
本山 だけど外山さんは昔から“中華主義”を云ってましたよ。
外山 うん、全然ブレてない(笑)。つまり近代に入って欧米列強が世界じゅうを侵略して回る以前の状態に戻せってことで、東アジアだとやっぱり“中華文化圏”ってことになる。
本山 “華夷秩序”ってやつですね。
外山 “朝貢貿易”とか“華夷秩序”って言葉からは、なんか日本が中国に対して劣位に置かれる印象になっちゃうし、たしかに形式的にはそうなんだけど、2人ともたぶんご存じのとおり、例えば“朝貢貿易”って、こっちがまず“貢ぎ物”を持参して中国に“ご挨拶”に伺うと、“苦しゅうない”ってことで中国の側は“宗主国”の威厳を見せつけるためにもこっちが貢いだ以上の分を“下賜品”としてお土産に持たせて返さなきゃいけない慣習なんだから、実質的にはこっち側が得をするシステムなんだよ、本来は。
本山 そこはその通りですね。
藤村 日本が自力で自国の防衛をすることができない、っていう認識が外山君の議論の前提になってるんだよね。
外山 アメリカとは手を切らなきゃいけない、というのが前提で、それはアメリカを敵に回すってこととほぼイコールだし、アメリカを敵に回して、中国もこれまでどおり敵に回したままで、日本が独立を守るなんてことは無理だろう、と。アメリカを敵に回すんなら中国とは仲良くしなきゃマズい。もちろんだからといって中国の完全な支配下に置かれてしまうことも避けたいんで、インドやロシアやベトナムやフィリピンや……といった中国と緊張関係にある周辺国としっかり手を組んだ上で中国に“おべっか”を使うという線が一番現実的だと思う。
藤村 今回の人質事件はまさに、安倍内閣のようにアメリカとの同盟関係を極限まで追求していけばどういう目に遭うかということだからね。外山君の路線にも、なるほどと思わざるをえないところもある。今回みたいな事態になった時に日本政府は何ひとつ有効な手を打てないってことも露呈しちゃったわけだし。まあそれは安倍だからかもしれないけどね。今回の件で外山君の“中華ホメ殺し主義”に妙なリアリティを感じてしまって、これまで面白半分に受け取っていたことを反省しました(笑)。
外山 “中華主義”もそうだし、“日本政府はテロに屈しろ”ってのも昔から一貫して云い続けてたんで、こういう状況になると却って困っちゃうよ(笑)。
藤村 え? それは何で? 「ほら見ろオレが云ってたとおりだろう」って威張ってもいいぐらいでしょう。
外山 そうなんだけど、ぼくのオハコって、ちょっと聞いた分には素っ頓狂なんだけどよく考えてみると正論、みたいなフレーズを連発して状況を撹乱する戦略じゃん。本質的でヤバい正論を云ってても、どこまで本気で云ってるのか分からないってことであんまり本気で怒られなくてすむ(笑)。それがこんなふうに状況とバッチリ切り結んじゃう展開になると、そういう“世渡り”が通用しなくなっちゃうんだよね。冗談めかしてゴマカせないというか、マジで“国賊”扱いされて“天誅”とか下されかねないよ(笑)。


外山 本山君も本来は“欧米列強はアジア・アフリカから出て行け”って立場でしょ?
本山 タリバンやアルカイダもそうだったけど、イスラム国だってある意味ではアメリカが生み出したようなものだと思ってますよ。だけどそれをアメリカがもう自分の責任で解決するつもりがなくなってるし、もちろん最終的には中東のいずれかの国がその役割を担うしかないんでしょう。現時点ではイスラム国と地上戦をやってる国は存在しないわけです。せいぜいクルド人勢力だけだから、今後いずれクルド人の国家もできるでしょうし、彼らが中東の中核国家に成長するかもしれない。あるいはトルコか、イランか、サウジアラビアなのか、とにかくどう展開するか分からない流動的な状況ですよね。もしかしたら“対イスラム国”ってことで中東諸国がまとまっていく展開になるのかもしれない。
外山 ぼくは仮にイスラム国が意外と持ちこたえて、もっと領域を拡大したとすれば、今やってるような“ヒドいこと”もそうそう続けてはいられないと思うけどね。
本山 『人民の敵』の創刊号でも外山さんはそう云ってましたよね。考え方としては分からなくもないんですが、少なくとも今のイスラム国を見るかぎり、あそこから今後マトモな指導者が登場してくるとは想像できない。そもそもジャーナリストを捕まえて殺すなんてことを、本気で国を作ろうと考えてる人間がやるかって話ですよ。
外山 いや、それは欧米ふうの近代国家、国民国家みたいな国家像だけを前提にした発想で、彼らが目指してるのは“近代国家”じゃないんだから。
藤村 “ジャーナリスト”なんて政治的には真っ先に殺さなきゃいけないような存在じゃないか(笑)。
外山 うん……まあ……そうとも……云える(笑)。
藤村 後藤さんは立派なジャーナリストだと思うけど、ジャーナリストって要するに、紛争地帯に入って、一般の貧しい人たち、“無辜の市民”がこんなにヒドい目に遭ってる、ってふうにヒューマニスティックな観点から報道するわけでしょ。彼らを紛争に巻き込んで“ヒドい目に遭わせてる”アメリカやイスラム国が糾弾される論調になることは分かりきってる。ジャーナリズムって“権力そのもの”ではないけれども“準権力”みたいな側面はあって、政治的な影響力を持ってるんだから、そりゃ狙われるでしょう。
外山 アメリカだって都合の悪いことは報道させまいとするし、イスラム国の側もそうする。手段が洗練されてるかどうかの違いにすぎない。
本山 だけど国家を運営していくんなら、外部に味方が絶対必要なんですよ。それを見境もなく……。
外山 いや、イスラム国はイスラム国で自前の“報道”をやってる。優秀な動画編集スタッフを抱えてて、ネットに流して、実際に世界中からイスラム国に渡ったり、自国でイスラム国に呼応するテロを起こしたりしてる人たちがいっぱい出てきてるでしょ。どうせ批判的な報道しかしないだろう既存の西側ジャーナリズムなんかには最初から期待してないんだよ。
藤村 イスラム国の人質になってるイギリス人ジャーナリストが、イスラム国を擁護するレポートを何回か送ってきてるよね。もちろん強制されてやってるんだと思うけど、そうではないジャーナリストも、今後出てくる可能性が絶対にないとは云えない。かつてソ連も中国も捕虜にした日本兵を洗脳したように、イスラム国だってもしかしたら“こいつは……”と目をつけた人質は折伏して味方として獲得する、ということをやってるかもしれない。
本山 そういうことをもしやってるんならまだ理解できるけど、現時点ではやっぱり見境なく捕まえて人質にしてるように見える。
外山 だってイスラムに改宗した常岡ナントカさん(常岡浩介)なんかは、フツーに歓待されて無事に帰ってきてるよ(笑)。


本山 ぼくはむしろそれこそイスラム国の問題を利用して、日本が実際に軍事行動をやるってことこそが、一番の“対米自立”への突破口だと思うんです。
藤村 それはさっきからの議論でよく分かったけど、実際に自衛隊が出て行くとして、一般の自衛官がちょっと銃を持って行くぐらいじゃハリボテにしかならんでしょ。やっぱり特殊部隊が必要だよね。日本にそれができるのか。
本山 たしかに自衛隊には現状いろいろ問題がありますよ。
外山 藤村君の質問の意味がよく分からないんだけど。
藤村 それこそアメリカがそんなことを許すんだろうか、と。日本が独自に“危険地域”に行って人質を救出するような……。
本山 そんな実力を持てるのか、と。
外山 いや、仮に能力的には持てるとしてもそれをアメリカが許すのか、ってことだね。
藤村 だって1発目の象徴的な行動ならともかく、やがては単にハリボテ的に自衛隊を送り込んだってダメでしょ。いざという時はオレたちは自力で救出できるんだぞ、ってぐらいの部隊を送り込まないと意味がない。アメリカがどう云おうとそれをやる、なんてことが日本にできるのか。
本山 平時にはそんなことできないですよ。だけど今回のように“今まさに国民が生命の危機に晒されてる”って時ならできたと思うんです。もちろん実際に戦闘してみたら、自衛隊はイスラム国に負けるかもしれないですよ。だけどそこで“負けた”という事実、これまでアメリカの保護下に置かれてきた自衛隊は弱いんだという実態を日本国民に知らしめることにだって意味がある。アメリカは今、“多極化”を目指してるような気はしますが、かといって日本がアメリカから自立していくことは、もちろんごく普通のアメリカ国民でさえ望まないでしょうね。
藤村 なるほど。普段のアメリカなら許さないだろうが、今回みたいな緊急事態であれば“突破口”にできた、と。
本山 しかもそういうチャンスはこれまでにもたくさんあったんです。北朝鮮問題でもそうだったのに、日本の当局者にそういう腹づもりがそもそもないだけですよ。
外山 うーん……ぼくと本山君の温度差もそのあたりだな。イスラム国が日本を敵視するようになったことに関しては、ぼくはやっぱり“日本が悪い”って思ってるからさ(笑)。“北朝鮮をやっつけよう”って話だったら、いくらでもそういう“タカ派路線”にだって乗れるんだけどな(笑)。
本山 それは外山さんが人が良すぎるんです。イスラム国なんて、あんな連中にイスラム原理主義の理想的な何かがあるかのような……。
外山 いやいや、そこまでは云ってないよ(笑)。
藤村 イスラム国が結構ろくでもないってことは分かってる。だけど“ろくでもない国”なんか他にもいっぱいあるし、そもそも今の中東の国なんてたいていは“ろくでもない”でしょ(笑)。たしかにイスラム国は中でも特に“ろくでもない”かもしれないけど、だけど“イスラム国の方がまだマシだ”って国だって他にあるかもしれない。
外山 相対的な問題だもんね。
本山 それは……まあよく分かります(笑)。
藤村 だから本山君がなぜそこまで悪しざまに云うのがよく分からない。
外山 ぼくもさっきからそこが釈然としないんだよ。たしかにイスラム国は相当ヒドいとはぼくも思ってるけど、“主観的にさえ何ら大義を持ってない”ってのは云いすぎだと思う。だってシリアの政権もかなりのもんでしょ。
本山 だって日本人は殺してないじゃないですか。
外山 でも宣戦布告をしたんだから殺されること自体は仕方ない。日本はこの間ずっとアメリカの“反テロ戦争”に協力してきたんだし、それは“テロリスト”たちに宣戦布告してるのと一緒。しかも安倍ちゃんは今回さらに踏み込んで、「イスラム国と戦う諸国を支援します」とか云っちゃったんだもん。
本山 湾岸戦争の時はカネは出したけど「フセイン政権と戦う諸国を支援します」とは云ってない、ってことですか?
外山 いや、あの時に第一歩を踏み出したんであって、湾岸戦争でもアメリカに協力すべきではなかったと思うよ。現実問題としてイラクにそんな戦力がなかっただけで、日本がイラクにミサイルとか打ち込まれても仕方なかったでしょう。それまでせっかく中立を維持してきたのに、湾岸戦争以降は一貫して、中東問題に関してはアメリカに忠実に協力してきたんだから、反米武力闘争に踏み切ったムスリムたちからは敵国と見なされて攻撃されたって当然だよ。もちろん91年の湾岸戦争の頃はまだ及び腰だったけど、次第にどんどん積極的な協力になってきたじゃん。
本山 それはそのとおりです。“属国化”がもうアリ地獄みたいになってて、たしかに日本の保守派の中にも「“属国”でいいんだ」「アメリカ的秩序の側に立ってれば日本は安泰なんだ」って感覚の人たちがいるんですよ。だけどそれによって日本人の置かれた状況はどんどん悪化してる、日本国民の生命と財産がますます危険に晒されてる、っていうのは間違いなく事実です。
外山 日本人が最初に“敵”視されてテロの標的になったのって、ペルーの日本大使館占拠事件(96年)だよね。今から思えばやっぱりあの辺りが転換点で、第三世界のテロリストたちが“日本”に対しても容赦しなくなった。戦後の日本が“独自外交”をやってたのは中東に対してだけで、他の地域に対してはそうではないけど、一応それでも各地のテロリストさんたちも、日本と“欧米列強”は別扱いしてくれてた感じがする。それがもう一緒くたにされても仕方ないようなアメリカ追従を湾岸戦争以来どんどん強化したんだもん。


外山 “アイ・アム・ケンジ”ってそもそもそのちょっと前の“アイ・アム・シャルリー”から来てるわけじゃん。雑誌社襲撃事件で、フランスが一丸となって“アイ・アム・シャルリー”を叫んでた。あの時にルペンが……。
藤村 ああ、お父さんのほうでしょ。
外山 うん、娘(註.フランスの極右政党「国民戦線」の現在の党首)じゃなくて初代の“父ルペン”が、「悪いけど私はシャルリーではない」って声明を出したの(笑)。「あんなろくでもない腐れ左翼雑誌のためにオレは戦う気はない」って(笑)。偉いと思った。せっかく“フランス革命以上”とまで云われるナショナリズムが高揚してる場面で、フランスを代表する“極右ナショナリスト”のはずのルペンがそれに同調しないっていうね。さすが“本物”だなあと感心した。
藤村 偉いよね。
外山 そこらへんのリベラル左派は“ルペン”と聞くと“あの極右、ファシスト、ネオナチの……”って反応をするじゃん。そんな単純な人ではなく、もっとスジが通ってるよ。リベラルがいざとなるとコロッとナショナリズムのマス・ヒステリーに流されて醜態を晒してる時に、ルペンは冷静っていう(笑)。
藤村 娘ルペンは“私はシャルリー”の側だったんでしょ?
外山 たぶんね。
藤村 代替わりして“大衆政党”を目指し始めたから、当然そうなるのは分かるけど。
外山 フランスが“私はシャルリー”でナショナリズム一色になってるのを見て、つい1週間ぐらい前まで“恐ろしい”とか云ってたはずなんだけどな、日本のリベラル連中は。簡単にブレすぎだよ(笑)。……だけどそれこそ父ルペンの振る舞いは“右翼版・人民の敵”だよね。
藤村 あ、そうかも(笑)。
外山 “ナショナリスト”がナショナリズムに熱狂する国民から浮くことを辞さない。むしろ水を差すようなことを云う(笑)。ただのバカな“差別ジジイ”じゃなくて、彼なりの正義や原理原則があるって証拠だよ。


藤村 ぼくは安倍内閣は戦後最悪の対米追従内閣じゃないかと疑ってるんだけど、例外的にアメリカに歩調を合わせずに独自路線を追求したのは3つで、1つはロシア外交だけど、これはクリミア問題が起きてポシャった。それから北朝鮮問題と、もう1つは靖国問題。靖国神社に参拝することをアメリカが認めるわけがないのに、彼は参拝して、しかも参拝してから“なんでアメリカが怒るの?”って戸惑ってた印象がある。
外山 アメリカと戦争したことがあるのは知らないのかな(笑)。
藤村 左翼は安倍さんを“歴史修正主義者だ”って批判するよね。そのとおりだと思う。ついでに云うと、もちろんぼくも左翼に云わせれば歴史修正主義者に決まってます(笑)。で、さっきの、なぜアラブ諸国が親日的なのかって話だけど、本山君も云うようにやっぱり大東亜戦争を戦ったからでしょ。もちろんまずは日露戦争でロシアに勝ってみせたのも大きいし……。
外山 まさに欧米列強と戦ってきた。
藤村 そうそう。
外山 あと、日本赤軍のおかげでもあるけどね(笑)。
藤村 うん、オレもそれを挙げようと思ったけど話が拡散しちゃうんで(笑)。ともかく戦前の歴史を肯定的に捉えるべき1つの証拠なんだよ、アラブの親日感情というのは。安倍内閣は“戦後レジームからの脱却”とか云ってるけど、欧米側につくならむしろそれは“戦後レジームの完成”だとしか思えない。対米追従で“戦後レジーム”をいよいよ完成させることが彼の主観では“戦後レジームからの脱却”になってて、もうムチャクチャじゃん。
本山 そのとおりだと思います。
藤村 で、問題は、そんな売国奴内閣であるにも関わらず、まるで“愛国者内閣”であるかに思われてることだ。どう“愛国”なのかっていうと、北朝鮮はともかく、とりわけ対韓国・対中国ってことでしょ。だから今や“嫌韓”だの“嫌中”だのってのは完全に、安倍内閣の売国性の目くらましの役をはたす有害なものだとしか思えない。
本山 それもそのとおりです。
藤村 それに日本の愛国陣営……と云っていいのかどうかも分からんけど、ネトウヨとかまで含む“愛国陣営”が、安倍内閣に引きずられて“対米追従”に流れ落ちてしまってる。
外山 あ、あの話もしたかったんだ。ぼくは本山君が“次世代の党”を心底から支持してるとは思ってないけど、最近よく“支持”のツイートをしてるじゃん……というか党員だよね(笑)。だけど次世代の党って、安倍ちゃんが“右翼的だ”と批判されてるような側面だけをただ純化したような印象で、そうではなくやっぱり反米ナショナリズムを前面に掲げないと、“非自民”あるいは“反自民”の右派勢力を結集することにはならんと思うんだよ。
藤村 だけどさっきからの本山君の話を聞いてると、例えば本山君が次世代の党の中で、今回の件でイスラム国に自衛隊を出せ、という要求で政府を突き上ようという運動を提起すれば、それは本質的には“対米自立”的なものになるし、そういう提起に次世代の党は反論しえないでしょ。そういう“作戦”として次世代の党に身を置いてるのかな、とは思う。
本山 むしろその一点に尽きますよ。そういうことをやるためにいる。


外山 ぼくは本山君が次世代の党を百パーセント支持してるわけではないことは分かってるつもりだし、そもそも議会政治がどうなろうとかまわないんで、本山君が次世代を応援しようが民主党を応援しようが共産党を応援しようが、きっと何かイケない考えがあってのことだろうし(笑)、好きにすればいいと思うんだけど、それでも最近はちょっと解せないことも多くて……あれもそうだったんだ、“樋渡支持”を表明してたでしょ? あれはさすがにどうかと思った。“田母神支持”よりマズい。
藤村 ん? 誰の話?
本山 樋渡啓祐。元・武雄市長で……。
藤村 ああ、図書館がどうこうっていう。
外山 市の図書館の運営をツタヤに委託したり……。あれは完全にグローバリスト、グローバル資本主義の手先であって、本山君のようなナショナリストが支持すべき人ではないと思うよ。こないだの佐賀県知事選って要するに、グローバリズムの手先と、既得権益層の代表とが一騎打ちをしたわけじゃん。
本山 対立候補のバックは農協でしたからね。
外山 うん。そういう対決において、ぼくならどっちに与するかと云えば、どっちにも与しないけど(笑)、2億ドル払うか死ぬか絶対どっちかにつけと云われたら、五十歩百歩だけど既得権益層の方がまだマシでしょう。やっぱりああいう樋渡的なグローバリズムの手先によって、さまざまな既得権益と共に、まだかろうじて少しは生き残っている“古き良き日本”的なものというか、“昭和”的なものというか、それらが“駅前商店街”のように一掃されてしまうことは阻止したい。
本山 農協的なものは“駅前商店街”的なものとは違うんですよ。まさにアメリカの属国体制のもとで、アメリカという虎の威を借りた高級官僚という狐どもが甘い汁を吸うための装置なんです。そりゃあ樋渡さんも官僚出身だから、同じ穴の狢かもしれませんけどね。
外山 だけど今やアメリカの要求が必ずしもこれまでのように既得権益層の利害とは合致しなくなってて……。
藤村 うん。
外山 これまでアメリカとうまくやることで甘い汁を吸ってきた連中が、もはやアメリカから見放されつつある。それに代わって、もっとアメリカの要求を直接に体現するグローバリストどもが跳梁し始めていて、ぼくは維新の会の連中もその手合いだと思ってるよ。
藤村 安倍内閣の農協改革なんか典型的にそういうものでしょ。TPPのための地ならしなんだもん。
外山 もちろんこれまでの利権構造も醜悪なものだからブッ潰せばいいんだけど、グローバリストによってブッ潰されちゃうと、却ってますますろくでもないことになる。
本山 うーん……なるほど。
藤村 要するに農協が潰れてTPPに組み込まれたら、極端な話、日本の農業はもう完全にアメリカの支配下に入ってしまう。
外山 既得権益層とグローバリストと、どっちが反米かといえば、今や、というか当然というか、既得権益層ですよ。


外山 本山君にとって、あるいはぼくにとっても、極めてもどかしい状況であるのはたしかですよ。既得権益層なんかに味方したくないけど……。
本山 いや、そういう“吉田ドクトリン”的な路線と“ナショナリズム”とが、どこまで重なるのかってことなんです。ぼくは1ミリも重ならないと思う。何の保護もないフラットな状況下で起ち上がらないのだとしたら、それは“ナショナリズム”ではないんです。グローバリズムに晒されてナショナリズムが起ち上がってこないんだったら、それはそもそも日本にナショナリズムなんか存在しなかったってことですよ。そういう“荒野”にナショナリストは投げ出されるべきだと思います。
外山 いったん……。
本山 ライオンの子が崖から突き落とされたような状況にまで追い込まれないと、本当の日本のナショナリズムなんか出てこない。
外山 そういう話ならちょっと賛成かな(笑)。いっそ1回メチャクチャになってしまえばいい、とも思ってるんで(笑)。
本山 結局やっぱり戦後日本の保守派の間ではずっと“吉田ドクトリン”が守られてきたんですよ。それこそが最大のガンなんです。
外山 ただちょっと微妙なのは、吉田路線にその後、角栄路線がプラスされて今の既得権益層が形成されたわけでしょ。
藤村 各地に公共事業をバラまいて……。
外山 そこは“吉田ドクトリン”ではないよね。
藤村 むっちゃ角栄(笑)。
外山 今ぼくらが思い浮かべて反射的に不愉快になるような“既得権益層”って、どっちかというと吉田茂ではなく田中角栄が生み出したものじゃないの? 吉田茂は“軍事はアメリカにお任せして、日本は経済成長に専念する”っていう枠組を作っただけで、その枠組を利用して現在まで存続する“既得権益層”を育てたのは田中角栄。
本山 田中角栄の路線は、“吉田ドクトリン”より悪いと思います(笑)。“反米”ではありますけどね。
外山 つまりやっぱり“微妙”なものばっかりなんだ(笑)。ぼくも田中角栄がいいとは絶対に思わないよ。だってそれこそ乱開発で国土を破壊したわけじゃないですか。
本山 吉田路線の延長でこそ可能だった、二重に気が狂った路線ですよ。論ずるにも値しない。
外山 だけど一方で、その角栄こそ“反米”で、中東の親日感情をさらに強化する中東独自外交を確立した人なんだよ。
藤村 経済格差も解消してくれた(笑)。
外山 戦後日本で最も、あるいは唯一と云ってもいいぐらい公然と“反米”的に振る舞った総理大臣が田中角栄であることは否定できない。
藤村 そこは間違いない。
本山 それで田中角栄を評価する人たちが、現在は小沢(一郎)信者になってるんですよ。あんなのと一緒にはなれませんよ。
藤村 田中角栄に比べたら小沢が遥かに“小粒”だってだけで、その基本路線を支持する人が一定数いることは不思議でも何でもないでしょう。
本山 その路線は間違ってます。
外山 だからぼくも“角栄支持”とか云ってるわけじゃなくて、“痛し痒し”の選択肢ばっかりだと嘆いてるんだよ(笑)。


外山 ぼくはファシズム転向した当初から、「君が代」ではなく「ふるさと」を国歌にすべしと主張してるんだけどね。3・11以降、急にリベラル派の反原発集会とかで歌われるようになって、ヘンに色がついちゃった気もするけど……。左翼は「君が代」の歌詞を問題にするじゃん。歌詞はべつにいいんだ。だけどメロディが無理矢理すぎる。古代からこのメロディだったっていうんなら仕方ないけど、明治になってから、まだちっとも身になってない西洋音階でデッチ上げたものにすぎないんだから、そこまで神聖視する必要もないでしょう。歌詞についても、内容的にはこれでかまわないんだけど、古代の和歌だし、あまりにも“古語”すぎて一般の現代人には意味が直感的に入ってこない。「ふるさと」も“ちょっと古語”だけど、“うさぎ追いしかの山”ぐらいならギリギリ大丈夫だし、素朴な郷土愛を基盤にしたナショナリズムの醸成にはちょうどいいし、「君が代」と同じく決して勇ましくはないという美点も維持できるし、メロディも単純かつ良くできてるし、まさに“国歌”にうってつけだと思うよ。「君が代」はそれはそれで「アメイジング・グレイス」みたいに“第2国歌”的に尊重すればいい。
藤村 「ふるさと」なら軍楽調にしてしまいやすい気もするけどなあ。イメージ浮かぶもん。
外山 歌詞の内容的にそんなアレンジは合わないでしょう(笑)。
本山 だけど「ふるさと」には“天皇”がいないじゃないですか。
外山 あ……そっちかあ……(笑)。
本山 「君が代」には天皇がいる。天皇がいなきゃダメですよ。
外山 4番を作るしかないな(笑)。
本山 “第2国歌”といえばそれこそ「海ゆかば」がよくそう云われるけど、「海ゆかば」には“天皇”もアリアリじゃないですか。
外山 そうだね。そっか……なるほどなあ。右翼の皆さんは難しいな(笑)。
藤村 ある人が“「君が代」はエロスが、「海ゆかば」はタナトスが表現されてる”と云ってたけど、あれもやっぱり戦争の歌で、しかもしんみりしてる。
外山 しんみりした戦争の歌(笑)。犠牲者が累々と……って歌だもんね(笑)。
本山 ヨーロッパ人なんかが聴くとまるで“反戦歌”のように聴こえるわけですよ。
藤村 “死体がいっぱいだー”って云ってるわけだもん、どこもかしこも。で、その上で「大君の辺にこそ死なめ」って。
外山 “よし、おれも死のう”と(笑)。“後悔はしません(「かえり見はせじ」)”っていう。普通はそんなにそこらじゅうに死体が転がってたら、“ああ戦争はイヤだ”という結論になりそうなものを……(笑)。
藤村 まあオレはナショナリストじゃないし、天皇主義者だから、こういう感覚はしっくり来る。
外山 今日は天皇主義者とナショナリストとファシストの座談会だね(笑)。
本山 “天皇主義者”と“ナショナリスト”は違うんですか?
藤村 違う。
本山 どう違うんですか?
藤村 ぼくは以前から云ってるとおり、皇室さえ御安泰であれば日本なんかどうなったっていい(笑)。そういう考え方の人って意外といて、例えばもし中国が皇室を推戴するのであれば自分は中国につくと公言している右翼青年がほくの知り合いにもいるし、まあ彼は世界革命論者だからそれが当たり前なんだけど、ぼくだって彼ほど過激ではないけどそっちに近いし。