革命的オレ様戦線、まさに結成

『見えない銃』に収録

 東京・三鷹市の絶対社本部(註.当時、文筆業の“出張拠点”として借りていたアパート)において、92年12月8日午前、「革命的オレ様戦線」の結成が、勝手にかちとられた。
 この新たなる革命党派は、どんな偉大な人物をも抽象的な「個人」に還元し、どのような高尚な思想をも「一意見」として数量的処理の対象にしてしまう「民主主義」という愚かな制度を、根幹から揺るがさんとするものである。
 その際、最重要のキーワードとなるのが「オレ様」である。民主主義のもとでは、「人間みな平等」などという、おそろしいファシズムがまかりとおり、人々は互いに「人口分の1」の存在として謙虚であることを強要しあう。誇り高い人間は、「民主主義の破壊者」として忌み嫌われ、疎外される。
 こんな世の中はもうたくさんだ。オレ様はたたかいに決起する。
 近頃、オレ様の許可なく政府が勝手に空港や原発をつくっているが、そんなものはこのオレ様が認めない。「原発とめろ、オレ様が大事」。
 カンボジアに軍隊を出すってんなら、まずこのオレ様に相談するのがスジってもんだろう。政府は、国連の云うことは聞けてもオレ様の云うことは聞けねぇってぇのか?
 「一票の格差」がどうのこうのと騒いでいるヤカラがいるそうだが、そもそもこのオレ様にたったの一票しか渡していないというのが大きな間違いなのだ。どうしてそこらへんの畜群どもとこのオレ様が等しく一票なのか? これは民主主義の名を借りたオレ様への大弾圧である。
 また、昨今の「反体制運動」にもウンザリだ。
 万民平等のユートピアをめざす社会主義など、当然のことながらクソクラエだ。何が団結だ。このオレ様がテメエラなんぞと軽々しく団結できるか。
 オレ様とそのへんの畜群男どもとを「同じ男」として論じるフェミニズムなど絶対に認めない。
 畜群エコロジストどもは、すぐに「地球」や「いのち」などという抽象的な価値を持ち出すが、そんなものが大事なのではない。オレ様が大事なのだ。
 宗教、論外。神様はオレ様だ。

 ──さて革オ戦の活動方針であるが、まず各地の「オレ様」によるオレ様戦線の勝手な拡大、機関紙の勝手な発行、そして全国の「オレ様」の勝手なネットワークである。
 オレ様は革オ戦・議長であるが、現在オレ様以外にもう一人、「革オ戦・委員長」を名乗っている同志がいる
(註.当時、何者かに追われて筆者のアパートに潜伏していた、後の「矢部史郎」である)。もちろんオレ様の方が偉大なのでオレ様が代表で、またオレ様の住んでいる三鷹のアパートが戦線本部に決まっているが、愛知に住んでいる「委員長」も同じことを云っている。今後も、全国各地に「本部」が増大する一方との見通しが出ている。
 各「オレ様」は、畜群どもを組織して自らのフラクションを形成し、その構成員(フ○○民)の質と量が、その「オレ様」の偉大さを客観的に示す根拠となる。「オレ様」は、自分の偉大さを証明するために、それぞれにさらなる活動のエスカレートを画策する。このようにして、革オ戦は自由競争の原理で革命市場を活性化させる。
 機関紙『ひとり前衛』をぜひ読ませていただきたいという者は申し出るように。

  万国のオレ様、勝手にしろ!