原発推進派懲罰遠征


 
凱旋トークライブ

懲罰遠征3勇士(外山恒一・山本桜子・東野大地)
司会 中川文人

2012年12月29日 東京・高円寺「素人の乱12号店」にて
2013年11月刊行の『デルクイ02』に掲載


 

中川 定刻となりましたので始めます。本日、司会を務めます中川文人です。共産主義者でございます(笑)。日本にもいろんな共産主義者がおりますが、私はちゃんとレニングラード大学、つまりレーニンさんが通い、プーチン大統領、メドベージェフ大統領を輩出した大学の出身で、グローバル・スタンダードの共産主義者であります。グローバル・スタンダードの共産主義者と日本の左翼では何がどう違うのかといいますと、ニューヨーク・ヤンキースと日大付属なんとか高校の野球部くらいの違いというか、ベルリンフィルハーモニーと和光市市民交響楽団くらいの違いというか、そのくらいの違いがあります。あんまりこういうことを云いますと、ただでさえ少ない友だちがより少なくなる、というか、ただでさえ多い敵がより多くなりますので、このへんにしておきますが、まあ、そこらの左翼とはちょっと違うんだな、ということさえ分かっていただければ結構です。
 というわけで、九州を拠点とするファシスト集団「我々団」という世にも恐ろしい陰謀結社がありまして、その方々が今回の総選挙で「原発推進派懲罰遠征」という恐ろしい闘いを展開しまして、本日はその報告会ということになっています。
 闘いを担った戦士のみなさんに登場していただいて、いろいろ語っていただくんですが、ちょうど年末でもありますし、選挙結果について思ったこと考えたこと、とくに原発をめぐって、「なんで反原発派は全然勝利できなかったの?」という疑問とか、「やっぱりもう爆弾闘争しかないのか」と思い詰めてるとか、お集りのみなさんにもいろいろ云いたいこともありましょうから、そのへんも忌憚なく意見交換する時間も設けて、みなさんで盛り上がろうという趣旨の集まりなので、あまり緊張せずによろしくお願いします。まあ戦士の方々もそんなに立派な話をする人たちではありませんし(笑)、ありがたくお話を聞くというよりも、みんなで云いたいことを云い合った方が楽しい集まりになると思います。
 それでは、「原発推進派懲罰遠征3勇士」のみなさん、ご入場願います!

  (拍手)

中川 まずは3勇士のみなさんの自己紹介から……。

外山 外山恒一です。

中川 あの有名な!(笑)

外山 この会場(東京・高円寺「素人の乱」12号店)のある界隈に私にそっくりな人が出没して粗相を働き、あちこちの店に出入り禁止になっていて、「あれが外山か、やっぱりロクでもない奴だ」と噂が立っているようなんですが、それは私ではなくて、私がホンモノの外山恒一であります!(笑)
 で、隣に座っている、私が九州で主宰している恐ろしいファシズム結社「我々団」のメンバー2名と共に先日、「原発推進派懲罰遠征」というのをやりました。2人にもそれぞれ自己紹介をお願いしたいと思います。

東野 東野大地といいます。二〇〇九年に九州に移住しました。よろしくお願いします。

外山 もともとの出身は……。

東野 滋賀県です。(聴衆に右派が多いのに気づいて?)あ、移住したのは平成21年です。

中川 ファシストなんですか?

東野 はい。

  (会場から「おおーっ」のどよめき)

東野 それでは山本さん、お願いします。

山本 山本桜子と申します。平成19年に九州に移住しました。ダダイストです。ダダイズムというのは、ファシスト党の上部団体の思想です。ノブレス・オブリージュ、高貴なる者の義務ということで、ファシスト党に協力しています。

外山 まあこういう、「可哀想な子」です(笑)。東野大地と山本桜子、どっちも本名なんですよ。マンガか君らは、って感じの2人ですが(笑)、よろしくお願いします。
 で、何の話からすればいいんでしょう? だいたい今日お集まりのみなさんは、我々が今回どういう活動を展開したか、把握されてるんですかね?

中川 把握してない方っています?

  (1人挙手)

中川 ……まあ、おいおい分かりますよ(笑)。じゃあ、「原発推進派懲罰遠征」というのがどういう闘争だったかはほとんどのみなさんが把握しているってことで、ではそもそも今回の闘争はいつ頃から計画してたのかって話を聞かせてください。

外山 今回ぼくらは街宣車を使ってたでしょ。それは九州のとある原発推進派の右翼団体から格安で譲ってもらったんですが……。
 ちゃんと説明すると、まず熊本で知り合いが山本太郎
(俳優。「3・11」以降、熱心な反原発活動を展開し話題となる)の講演会を企画したんです。その打ち上げの席に、もちろん山本太郎さんも参加して、講演会のお客さんたちと車座になって飲んでる場に突然、軍服というか迷彩服みたいなのを着た若者が現れて、「実は自分は右翼なんですけど原発には反対なんです。今日は他に予定が入っていたので講演会には行けなかったんですが、一言ご挨拶だけでもと思って、お邪魔した次第です」とか云うんですよ。じゃあこれから打ち上げに参加するのかなと思ったら、「これから仲間たちと高千穂に登るので、それでは」って(笑)敬礼して帰って行った。
 面白いなあって、後から熊本の友人経由でその青年に行き着いた。改めて会ってゆっくり話そうってことになって、実際に会ったんですけど、そしたら彼は昔、街宣車を自作して所有してた時期があって、でも今は他の右翼の人に譲ってしまった、と。ところがその譲った相手ももうあんまり使わなくなったんで、誰か買い取ってくれる人を探してるって話が出てきた。それでぼくらが手を挙げることになったんです。
 街宣車といっても、いかにも右翼っぽいイカツイのではなくて、ハイエースの上にスピーカーと看板設置台がついてるぐらいのものなんだけど、それを車も設備も全部込みで15万円で譲ってもらえるっていうから、こんないい話はないと思って。
 で、実際に譲り受けるためにその今の所有者である熊本の右翼の人に会いに行った。そしたら「譲るのはいいけど、一体何に使うんだね?」とか訊かれるわけですよ。ちょっと話してて分かったんだけど、どうも幸福の科学の信者なんですよ(笑)。だから原発推進派だってことは明らかじゃないですか。「原発推進派の候補者を追い回すために使います」って云うわけにはいかないなと思って、だけど嘘を云うのも気がひけるんで、ちょっと考えて、「悪い政治家をやっつけます」って答えたら、「そうか、頑張りなさい」って(笑)。
 街宣車の入手はそういう経緯だったんだけど、次の衆院総選挙で原発推進派の選挙カーを街宣車で追い回すってアイデア自体はもちろんそれより前からあって……。いつから云い出したんだっけ?

山本 春頃じゃなかった?

外山 街宣車を譲ってもらったのは6月で、だから少なくともそれより前だよね。アイデアはあったけど、じゃあ街宣車をどうしようって話をずっとしてて、今もぼくが乗ってる軽自動車があるんで、その屋根にスピーカーを設置しようかとか云ってたところに、さっきの右翼青年の登場があって、格安で街宣車が手に入る話になったので、それはもう買うしかないでしょ、と。
 近いうちに衆院解散、総選挙って話はもうかなり前からあったじゃないですか。「近いうち、近いうち」ってずっと云われ続けてて、だからぼくらとしても、早いとこ街宣車を準備しないとってずっと思ってた。6月に入手できたわけだから、結果的にはかなり余裕を持って間に合わせることができたんだけど。
 でも実際は都知事選と同日になったでしょ。都知事選は都知事選で、ぼくは立場上、何かやらないわけにはいかないじゃないですか(笑)。
 前回の二〇一一年の都知事選の時も、もちろん実際にはぼくは立候補してないんだけど、実際の都知事選の政見放送がテレビ放映される時間帯に合わせて、ぼくはぼくで政見放送ふうの演説動画を自作してユーチューブにアップした。本来なら次の都知事選は二〇一五年のはずなんで、都知事選のことなんかまったく念頭になく、いざ衆院解散・総選挙ってことになったら忙しくなるなってことだけ考えてた。そしたら11月だったか、石原がいきなり辞職して、来月にも都知事選って話になった。
 そもそもぼくは毎年11月はすごく忙しいんです。「どくんご」っていう野外テント芝居の劇団があって、ぼくは彼らの大ファンで、スタッフでもあって、11月は毎年、その全国ツアーが九州編にあたる時期で、ぼくもずっと劇団について九州各地をうろうろしている。なのに石原が急に都知事を辞めるとか云い出して、「ったくこのクソ忙しい時に迷惑な」と思ったけど、それはまあギリギリなんとか、「劇団どくんご」のツアーが終わってから都知事選の告示日まで10日間ぐらいありそうだったから、その間に新しい演説動画の一つぐらい頑張ればどうにか作って発表できるかなと……。

中川 実際の政治状況に具体的影響を与えるわけでもないのにあれこれ思い悩んでたんだ(笑)。

外山 全然関係ないのにね。困るんだよ、石原に勝手なことされると(笑)。その上さらに衆院解散・総選挙、なんてことになったらもうパニックだからやめてほしい、野田クンには任期いっぱい頑張ってほしいと思ってたんだけどね(笑)。
 実際、冬にはやらないだろうと思ってたの。冬に選挙やると雪国の人たちは大変だろうから、まあ11月いっぱい野田クンが耐えてくれれば、早くても春になって雪がなくなってからだろうって。実際ここ何十年かは真冬に総選挙やったことはないって聞いてたしね。
 そしたらいきなり解散でしょ。大変でしたよ、看板も大急ぎで作った。

山本 トルエン中毒に……。

外山 そうそう(笑)、油性塗料で一晩じゅう街宣車の看板を書いてたらトルエン中毒で頭がクラクラしてきた。

中川 外山恒一ってのは二〇〇七年の都知事選のイメージが強いから、ネットでの活動が中心だと思ってる人が多いんですよ。だけど今回は見事に、九州全土にわたる街頭闘争を展開されて、非常に高い評価を……狭い業界内で(笑)。

外山 全国の心ない反原発派の人たちからの熱い支持を(笑)。

中川 「今回は街頭で勝負したるんや」的な思いがあったんでしょうか?

外山 自分としては、そんなに特殊なことをやったつもりはないんだけど。

中川 ネットを使うとか、そういう情報戦のことを選挙の世界で一般に「空中戦」と云うんだけど、今回の外山先生はまさに「地上戦」をやったわけです。で、やっぱり地上戦をやる方が大変なんですよ。

外山 でもそっちの方が面白いですよ。

中川 もちろんそうなんだよ。しかしその地上戦の面白さをまたネットで実況中継して伝えるというのは非常に画期的だった。

外山 そうだね、ツイッターというツールがなかったら今回のもまた違う展開になってたかもしれないね。ツイッターがあったから、今どういう状況になってるのか、リアルタイムで刻々と報告できた。
 でもまあ、ぼくは昭和の人間なんで、ネットがない時代から活動してますからね。何かやれば、後でレポートを書いて「こういうことやりました」って報告するっていう、ネットがなかったとしても結局そうしてるだろうから、どっちにしてもやるにはやったと思いますけどね。

中川 今回は時々ユーストリームでの中継もやってたでしょ。ぼくもそれを見てたんだけど、ビンラディンが殺される時にオバマやヒラリーがそれを動画中継で見てたのもこういう感じだったんだなあって体験しましたよ(笑)。

外山 あ、街宣車がなかなかターゲットの選挙カーまで追いつかないんだよね(笑)。つまりぼくが街宣車で選挙カーを追っかけるんだけど、選挙カーのすぐ後ろにつけて街宣すると向こうの出してる「ナントカ候補をよろしく」って音をかき消しちゃって、法的に選挙妨害ってことになりかねないから、多少の距離を置いて追っかけることにしたんだよ。
 ところが距離を置いたらそれはそれで簡単に追尾を振り切られちゃう結果にもなるわけで、だったらもう1台、車が必要だと。さっきも云った、普段使ってるぼくの軽自動車を東野君に運転してもらって、そっちはもう相手の選挙カーの直後をひたすら追尾する。ぼくが振り切られたら、追尾を続けてる軽自動車から「今どこを走ってます」って連絡してもらう。もちろん運転しながら携帯で連絡してもらうのは、道交法違反でもあるけどそれ以上に東野君はもともと運転が危なっかしい人なんで、助手席に乗ってる山本桜子がぼくに電話をかける。ぼくの側がどのようにその電話を受けていたのかってのは……それは秘密なんですけど(笑)。
 でもとにかく、けっこう簡単に、頻繁に引き離されちゃうんですよ。選挙カーがいて、すぐ後ろに東野君の軽自動車があって、その後ろにさらに2、3台置いて、ぼくの街宣車が追っているっていう形が一番多かったから、赤信号とかですぐ引き離される。それでも福岡や熊本ならぼくも土地鑑があるんで、引き離されてもどうにかすぐ追いつけることが多いんですけど、宮崎とか大分とか、土地鑑のないところではほんとに大変なんですよ。
 いま中川さんが云ったのはそういう場面の話だと思うんだけど、ビデオカメラで記録をとったり、ユースト中継したりしてるのは軽自動車の山本桜子なんで、選挙カーを追いながら桜子が「今ここです」ってぼくに連絡してる場面が延々続いて、しかしなかなか外山街宣車が現れないっていう(笑)、そういうことがしょっちゅうあったはずなんですよね。

会場 あれオカシかったですよね、桜子さんが、「外山さん、そっちじゃないって、もう、バカ!」って云うシーン(笑)。

中川 じゃあそれをちょっと見てもらいましょうか。あれは大分だよね。(問題のシーンは1:10あたりから)

外山 ただこの時は選挙カーを見失ったんじゃないんですよね、逃げたんです(笑)。支援者が大量に集まってる屋外集会の会場に入ってしまいそうになって。

中川 理論的な部分についてもいろいろお伺いしたいんですが、どこまでが合法で何をやったらダメなのかってあたりは、どのように考えて計画を立てたんですか?

外山 何と云うかねえ……人間、都合の悪いことは目に入らないようになってるんですかね。事前に公職選挙法の該当する部分はちゃんと読んだんですよ。「選挙妨害」っていう項目がありますからね。「候補者の選挙運動を妨害してはならない」ってこともそのあたりにちゃんと書いてある。妨害すると「選挙の自由妨害」っていう罪に問われる。
 その条文にね、「暴力によって妨害してはならない」って書いてあったように記憶してたんだけど、実際には「暴力もしくは威力によって」って書いてあるの。だけどその「威力によって」って部分がなんかキレイに……目に入ってなかったんだよね。
 おぼろげな記憶でってことではなくて、今回の行動を計画するにあたって、ちゃんとしっかり読んだはずなんだけど、不思議だ(笑)。

中川 実際にはどの段階で警告を受けたんだっけ?

外山 順を追って話すと、まず……。いや、じゃあ最初に警察に取り囲まれた場面も見てもらいましょうか。(問題のシーンは7:10あたりから)

中川 ところで君たちが追いかけた原発推進派の候補者の方々は落選されたんですか?

山本 共産党の人は落ちた。

外山 我々の闘いによってね(笑)。

東野 さっきの動画で「この人は何やっても当選しそうだ」って云ってた大分の……。

外山 吉良州司。彼も落ちたね。まあつまり我々がいかに議会政治の情勢を分かってないかってことだよね(笑)。実際、追っかけてる時は「コイツ絶対落ちねえな」って思った。地盤、地盤、地盤ってとこばっかり回られて、道々から支援者らしき人々が握手を求めて湧いて出てきてたから、いかにも安定した候補者に見えた。

中川 (動画を見ながら)警察が出てきた。これは何日目?

外山 えーと、5日目かな。初日は熊本1区で松野頼久っていう、維新の会の候補者を追っかけて、2日目はさっきも出てきた大分1区の吉良って人ね。3日目が福岡2区の鬼木っていう自民党候補で、4日目に熊本2区で自民党の野田毅っていうベテラン議員を追っかけようとしたんだけど選挙カーを見つけられなくて、5日目に再挑戦して、朝から野田の選挙事務所を張って捕捉したんだ。そんでしばらく追っかけてたら、警察を呼ばれた。
 つまりそれまでも少なくとも熊本1区と福岡2区では選挙カーをさんざん追い回してるのね。だけど警察は出てこなかった。だから警察とまあ「接触」したのはこの5日目が最初。
 「接触」って微妙な云い方をしたのは、この時には「やめろ」とか、具体的な警告をされたわけじゃないのね。野田の選挙カーと、ぼくらの軽自動車と街宣車が停まっているところを警察に囲まれて、ちょっとした事情聴取みたいなことが終わってから、選挙カーだけを警察が先に発進させたの。ぼくらがそれを追って発進しようとするのを、警察が通せんぼして阻止する。熊本2区は恐ろしく広いんで、いったんそうやって引き離されちゃったら、もう野田カーを再発見することはほぼ不可能で、我々としてもそこで諦めざるをえない。
 で、その後で警察はぼくらに対して、「原発についてはいろいろ考え方もあるだろうから、君たちがこんなふうに活動するのもまあ分からんではないけど、もうちょっとやり方を考えて、ほどほどにしてくれないかなあ」って(笑)。だからこの時は、ぼくらの活動が違法だとか、これ以上やったら検挙するぞみたいな警告とかいうのは一切なかった。
 そういう警告を受けたのは鹿児島が最初なんだっけ?

東野 そうですね。

外山 鹿児島は、この熊本2区の翌日か。

東野 です。

外山 鹿児島でもまだ最初から警察の尾行がついてたわけじゃないよね?

東野 そうですね、ついてなかった。

外山 鹿児島1区で、山之内ナントカっていう維新の会の若い候補者を追っかけた。選挙カーには山之内本人は乗ってなくて、選挙スタッフだけだったんだけど、まず彼らが交番に駆け込み……。
 だけどまあ、日本の警察はそんなの相手にしないからね(笑)。「何か具体的被害があったの?」みたいな対応がおそらくあって、とくにないわけで、「それじゃあ警察は動けませんなあ」って、たぶん(笑)。「民事不介入と云ってね」みたいな。「自分で解決する努力をしなさいよ」って。きっとそういうやりとりがあって(笑)、やがて選挙スタッフが交番から出てきて、何もなかったようにまた選挙カーを走らせ始めた。
 ぼくらもそのまま1時間ぐらい追っかけ続けて、そしたら向こうは今度は交番ではなく警察署に駆け込んだ。ぼくはその段階でさっと逃げて、離れた場所で待機することにした。東野君もそうするだろうと思ってたんだ。警察署の近くの、選挙カーが見えるどこかちょっと離れた場所で監視を続けて、選挙カーがまた動き出したらぼくに連絡してくるだろうって。まさか東野君も警察署の敷地に入って、警察署の駐車場で選挙カーを見張ってるとは思わなかったからさ(笑)。
 後から聞いたら、東野君はそこが警察署だってことに気づいてなくて、それまでも選挙カーがどこかの建物の敷地に入って、中で支援者の集会がおこなわれるってことはあったから、この時もそういうことだと思ってたみたいなんだよね。商工会の建物かなんかだと勘違いしてたらしい。そしたら実は警察署で(笑)、やがて中から警察がいっぱい出てきて、軽自動車が取り囲まれた。
 ぼくの方はそんなことになってるとは思わないから、一本隣りの通りかなんかで東野君から「選挙カーがまた動き出しました」って連絡が入るのを待ってた。なのにいつまでたっても連絡がこないから、おかしいなと思って様子を見に行くと、そういうことになってた。

中川 どういう状況だったんですか?

東野 署の中で話を聞きたいから車から降りなさいってずっと云われてたんですけど、「話ならここでもできるじゃないですか」って降りるのを拒否してたんです。「自分が何をやったのか分かってるだろ」って云うんで、「よく分からないので説明してください」って。

中川 警察の敷地にいたんでしょ。「おまえはここで何をやってるんだ」って訊かれるでしょ、普通(笑)。

東野 訊かれましたね。でもそういう質問については無視して。

外山 「人を待ってるだけだ」(笑)

中川 自分から敷地内に入っておいて「おれに何の用だ」ってのは筋が通らないよ(笑)。

東野 「そんなふうにダンマリを決め込んでても意味ないぞ。話した方がラクだぞ」みたいなことも云われたんですけど、それもずっと無視してました。そしたら最後には警察の方が折れて……。

外山 いや、ウチの若いモンたちは場慣れしてないし、全体的にコミュ力にも問題があるから(笑)、警察と揉める状況になったらどうなるか心配で、事前に「警察に対応するな、そういう状況になったらぼくが全部対応するから、君たちは警察が何云ってきても無視しろ」とは云ってたんですよ。それはぼくの街宣車も一緒に取り囲まれる状況を想定して云ってて、東野君たちだけが取り囲まれる状況は想定してなかったんだけど、どうもその助言を頑なに守り続けていたみたいで(笑)。

東野 警察側の顔ぶれも次々に入れ替わって、車を持ち上げる……何て云うんですかね、ジャッキ? あれを積んだ警察車輛を両側につけられたり、そういう脅しみたいなこともあって、内心「ヤバいな」と思ってたんですが、最終的には向こうが折れたみたいで、ポスターの裏みたいな白い紙に「あなたがたの行為は軽犯罪法に抵触します」ってことが書かれたのを見せられた。「これは警告です 鹿児島県警」とか書いてあって。「具体的にどういう条文に触れるんですか」って訊いたら、「つきまといだ」って云われた(笑)。
 で、「分かりました。警告ですね。じゃあ行かせてください」って云ったんですけど行かせてもらえなくて、またゴチャゴチャやりとりがあったんですけど、最終的には免許証を提示して。「最後に電話番号も教えろ」って云うんで、電話番号も云いましたね。だけどその後も、「社会人か?」とかいろいろ訊いてくるから、「さっきので最後って云ったじゃないですか、もう行かせてくださいよ」って云うと、向こうも渋々それで行かせてくれました。

外山 その話を聞いて、「やっぱり公職選挙法違反じゃないんだ」と思いました(笑)。例の「威力」の文言にはその時点ではまだ気づいてなかったんで、警察としても困って「軽犯罪法の『つきまとい』」ってのを出してきたんだろうと。なかなか考えたな、と。
 で、その日は、それでも逮捕覚悟で選挙カーの追尾を続けるってこともちょっと考えたんです。どうせ軽犯罪法違反のショボい容疑だし。
 でも実は、鹿児島のこの山之内って候補に関しては、わざわざ選挙カーを追尾しなくても何の問題もないって事情があったんですね。というのも、選挙カーはあちこち走り回ってるんだけど、山之内本人は毎日、朝から晩まで繁華街のアーケードの入り口に立って演説してるってのを知ってたから、そっちに行きゃいいだけの話なんです(笑)。
 だから街宣車で夜8時まで、繁華街をぐるぐると百周ぐらい回りながら、山之内クンが見える範囲を通る時には「今あそこで演説してる山之内サンは原発推進派です!」と。そんなことされるよりは選挙カーを追尾されるのをガマンしてた方がよっぽど山之内クンとしても打撃は小さかったと思うんだけど(笑)。
 だから、まず5日目に熊本で初めて警察が出てきて「ほどほどにしてよ」と云われ、その翌日に今度は鹿児島で初めて法律的に「警告」を受けた。でもそれも公職選挙法による警告ではなくて、軽犯罪法違反である、と。

中川 しかしそれも実はこの20年ぐらいの大きな傾向ではありまして、つまり左翼の人も右翼の人も政治的な動機でさまざまの“コトを起こす”わけなんですが、なかなか「政治犯」にはしてもらえないんだよね。それが高度に発達した先進国家のやり方なんです。
 例えば法政大学の学生運動でもこの数年間に計百十八人の逮捕者を出しているんですが、法政の学生が大学の建物に入っただけなのに「建造物不法侵入」とかね(笑)。

外山 やっぱりそれは「政治犯」にはしたくない、と。今回も我々は「選挙制度の破壊」を意図してるわけなんだから、本来なら破防法とか適用されてしかるべきなんだが……(笑)。

中川 こっちは国家の根幹に手をかけようとしているのに、当の国家権力は軽犯罪法の「つきまとい」で処理したがるという。

外山 公職選挙法が出てきたのは何日目だっけ?

東野 鹿児島の次の日ですね。

外山 宮崎か。まあぼくらの方は単に「威力によって」って文言を見落としてただけなんだけど、警察としてもこれを一体どう取り締まっていいのか分からなかったんだろうね。だから熊本ではとりあえず物理的に追尾続行が不可能になるように取り計らっただけで、鹿児島では「軽犯罪法違反」で、宮崎でようやく公職選挙法が出てきて、「威力による選挙の自由妨害」であるという警告を受けた。
 しかしそれはそれでこっちとしても“つけ入るスキ”を与えてもらったようなもので、警察の登場すらなかった福岡や大分の例も含めて、各県警の対応がバラバラだったわけですよね。

中川 いわば定説がない。

外山 うん。つまり「県警によって判断の分かれるケースなのだ」ということで(笑)、一度警告を受けた県でまたやると今度は検挙ってことになるかもしれないけど、まだ警告を受けてない県では、警告を受けるまではとりあえず試しにやってみてもよい、と(笑)。やってみなきゃそもそも法に触れるのかどうかも分からないわけだから。熊本県警は法には触れないと判断したわけだしね。

中川 これもまた非常に重要な問題でありまして、若い方にはよく分からないかもしれませんが、昔は地球の半分が治外法権だったんです。ぼくはソ連の大学に行ってたわけだけど、ハバロフスクの空港に降り立った段階で、日本の警察はぼくにはまったく手を出すことができなくなる。そこからは東ドイツにだって中国にだってぼくは行けるわけですよ。

外山 国家権力が本当に恐れるのは他の国家権力だけなんですよね。

中川 そうなんです。アメリカのFBIだろうが日本の公安だろうが、国内では警察官は法律に守られてる。だけど日本の警察官であってもハワイに行けばただの民間人なんです。そういうことを国家権力のみなさんは非常に厭がる。国境とか、あるいは県境というものが今回のような闘争には非常に重要なファクターで……。

外山 まあ実際そういう作戦だったんですよ。逮捕されることを覚悟はしていたが、避けられるもんなら避けたいので、じゃあどうすれば避けられるかってことで考えた作戦の一つが、県を毎日変えるってことだったんです。
 選挙は12日間あって、九州は7県なんで、1県1度ずつぐらいカブるけれども、とにかく警察側が対応を整えないうちに他の県に行っちゃう、と。だから今回ぼくらは毎晩、20時までの活動を終えたらもうその足で、どこにも寄らずにとにかく県境を目指す。まるで昔の西部劇の、列車強盗が州境を目指す、「州境を越えればそこには自由が!」っていう(笑)、あのノリだったよね。

中川 まさにそれが、地上戦を展開する上で重要なヒントなんです。暴走族の皆さんも昔そうだったんですよ。東京で走ってて、白バイに追われた時はとにかく埼玉県や千葉県を目指す。そしたら向こうは県境で引くっていうんだよね。

外山 そうかそうか、それと同じだ。

中川 暴走族と一緒(笑)。だからこれから地上戦を計画する人たちには是非そこらへんの機微をね。
 警察にも限界があるのよ。万能でもなんでもない。まず法律に縛られるし、さらにはテリトリー争いというのもある。警視庁が千葉県で犯人を捕まえちゃいけない。千葉県警に怒られるんだ、「おれたちのシマで何やってんだ」って(笑)。

外山 もちろんそうやってまんまと次の県に到着しても、「何々県なう」とか呟かない(笑)。我々が何県で行動を開始するか、朝になってみないと分からないようにしてた。必ずしも隣県に移動するわけじゃなくて、フェイントで隣々県ぐらいまで一気に移動してみたり。着いたら朝までネット・カフェの駐車場かコイン・パーキングに街宣車を停めるんだけど、ブルーシートかぶせてたしね(笑)。まあ向こうが本気になってNシステムとか活用し始めたらムダなあがきなんだけど、いきなりそこまでの対応はしないでしょ。
 そういえば今回も、そのシーンそのものは撮影できなかったんだけど……宮崎で初めて公職選挙法違反で警告を受けて、その後どうしようかなって迷ったんだ。鹿児島と一緒で、逮捕覚悟で引き続き選挙カーを追い回すかどうか迷った。
 だけどすぐに抜け道を思いついてしまった(笑)。警察に取り囲まれて警告を受けて、どうしようかなと思いながらまた走り始めて、数十メートル行ったところで思いついたから、当然まだ警察が周りにいるのね。で、車を降りて、警察のところに行って、警察の車をトントンとノックして、「ちょっと訊きたいことがある」と。そしたら「まず質問を受け付けるかどうかを決めるから待て」とか云われたんだけど(笑)、それはまあいいとして、結局受け付けてはもらえた。こっちの質問は、「要するに選挙カーを追尾さえしなければ、街宣そのものは選挙期間中であってもべつに違法でもなんでもないんですよね」ってことで、「そうだ」って云うから、「だったらこの後はただ街を街宣して回ります」と。
 それは実は含みとしてはね、停められて警察の警告を受けたのはぼくの街宣車だけで、東野君の軽自動車は停められずにそのまま追尾を続けてた。だから相手の選挙カーがどこを走ってるのかはまだ分かってるわけ。つまりぼくは、選挙カーが今どこにいるか東野君に随時教えてもらいながら、その同じエリア、ほとんど通り一つズレたぐらいのところで、「今このあたりを走り回っている何々サンは原発推進派でーす!」って街宣して回れるわけだ(笑)。宮崎では少なくともその段階では警告を受けたのはぼくの街宣車だけで、東野君は何も警告されてないんだから、そういうことが可能になる。
 もちろんそこまで細かいことは云わずに、「もう選挙カーの追尾はやめて、選挙カーとは無関係にそのへんを街宣するんで」って云って、「それなら問題はない」ってことで警察もいなくなった。
 で、ここからがさっきの県境云々の話なんだけど、警察とそういうやりとりをして警察もいなくなった後で、ぼくはその場でその経緯をツイッターで報告するために携帯をいじってたのね。そしたら突然、窓をトントンとノックされた。見ると男が1人立ってる。窓を開けたら、「警察の者だけど」って云う。さっきまではいなかった人なんですよ。後から思えばそれが公安なんですよね。
 取り囲んで公選法違反の警告をしてきたのは、捜査二課の人たち。それはそうはっきりと身分を名乗ったし、そもそも選挙違反事案は二課の担当だしね。公安の人は「公安です」とは云わないし、ただ「警察の者だけど」って云うだけなんですけど、完全に二課とは別で動いてて、もしかしたら二課の人たちすら二課がぼくの車を取り囲んでいるそのさらに外側から実は公安が様子を見てたことを知らなかったかもしれない。
 で、妙に馴れ馴れしいんですよ。「どうすんの、これから」とか野次馬みたいな口調で(笑)。「困るんだよ、こんなことされちゃ」って苦笑いしながら、フレンドリーな感じで雑談めいた会話を仕掛けてくる。適当に相槌を打ちながら、「普通に街宣するだけなら問題ないって云われたんでそうしますよ」とか云ってると、最後に「やるんなら大分でやってよ、大分で」って云い残して消えた(笑)。

中川 そんなふうに警察にもテリトリー、管轄の問題があるっていう話なんですが、もう一つ重要なのが、さっきの動画にもバッチリ記録されてた、熊本の野田毅だっけ? 彼が思わず「渡辺喜美からカネもらってんのか」って口走ったという話。
 重要な点は二つあるんですが、一つにはそういうふうに考えるのが議会政治をやってる人たちにとっては常識なんですよ。政治は損得でやるものなのよ。もう一つは、思想犯と一般刑事犯の違いもそこにあるということです。警察白書を読めば分かるように、犯罪者の9割以上は泥棒です。まず犯罪の基本は泥棒で、みんなカネのために悪いことをする。カネのためでもなく悪いことをする人ってのは非常に特異な人で、それが思想犯。カネにもならないのに悪いことをするのが思想犯なんだということを、是非みなさんにもご理解いただきたい。
 で、例えば日本には中核派という過激派グループがあるんだけど、あれは思想犯ではありません。彼らは必ずカネになる運動しかやらないから。

外山 あんなの一般刑事犯だと(笑)。

中川 そう。

外山 知らない人もいるでしょうから説明しときますと、中川さんというのはレニングラード大学出身なんだけど、レニングラードにご留学される前は法政大学に通ってて、法政大は中核派の拠点なんですね。だからそのシマを守ってる中核派の活動家もいっぱいいるんだけど、それ以外にもとくにどこの党派にも組織されてない云わば個人的過激派の学生もいっぱいいて、ずっと中核派に締めつけられながら活動してたの。
 そこへ中川さんが入学して、反・中核派の学生たちの指導者となり、中核派の暴力支配と闘って、しかも勝利を収めてしまったという恐ろしい経緯があるんです。そういう人なんで、何かというと中核派の悪口がいっぱい出てきます(笑)。

中川 ともかく「カネになる」なんて話を度外視できるかどうか、これが非常に重要な問題です。

外山 さっきの県境云々の話に戻すと、まず一つには、実際やってみてそうだったように、ぼくらへの対応が県警によって分かれるだろうから、それを活動をしつこく継続する云いわけにできるんじゃないかという目算があった。
 それからやっぱり、警察としてもこれは有罪にできるという確証が持てないとなかなか手を出しづらいじゃないですか。脅しの意味で逮捕することもあるけど、原則としてはやっぱり有罪にすることを前提に逮捕の判断をするわけで。
 だから今回のような、有罪にできるかどうかよく分からないケースで、しかも警察ももう何日目かにもなればぼくのツイッターもチェックして、ぼくらが県を毎日変えてるってことも把握してるはずで、であればもう、どうせウチの県でやるのは今日1日だけだってことも向こうに伝わってるわけじゃないですか。こんな有罪にできるかどうかも分からないような案件で下手に逮捕してメンドくさいことになるよりは、たった1日の話なら適当にやり過ごして早いとこ他県に行ってもらえ、って警察も考えるんじゃないかなあと期待した。
 それからまあ、云ってみれば「広域犯罪」ですからね(笑)。それを摘発するには各県警が足並みを揃えて、連携を取らなきゃいけないはずなんで、そんな態勢をたった12日間ぐらいじゃ構築できねえだろうと思った。ざっとそういう諸々の思惑で、県を毎日変えるという作戦になった。

中川 今回の外山さんの悪知恵では、そこが一番素晴らしいと思いますね。警察は起訴まで持って行かなきゃ成績が上がらないし、検察に怒られるわけですよ。検事さんは起訴された案件を裁判で有罪にできなければ出世に響く。ニセ左翼である日本の左翼の人たちは警察官や検事のことを極悪人のようにイメージしてるけれども……。

外山 単なる役人だよね(笑)。

中川 うん、ただの公務員なんです。だからやっぱり「正義の実現」なんてことよりも、自分の出世の実現の方が大事なんです。そのへんの気持ちを分かってあげた上で彼らには対処しないと、つまんないところで損をする。やれる闘争もやれない気がしてしまう。

外山 だからこっちも、本当にヤバいなあと思ったら云いますよ、「今日だけですからぁ」って。「見てるでしょ、ツイッター」って(笑)。

中川 でも東京でやったら初日に逮捕されてるね。警視庁は警察庁と事実上同格の組織だから、多少強引なこともできる。

外山 やるなら地方ですよ(笑)。

会場 公選法違反の取り締まりというのは捜査二課の中の知能犯担当がやるんです。知能犯の扱いなんですね。

外山 だから警察と知能比べを……。

中川 今までにそういう事例がなかったんだろうなあ。

外山 鹿児島での「つきまとい」による警告にしてもね、警告されてもなお山之内クンの選挙カーを追いかけ続けたら今度は逮捕されるかもしれないけど、軽犯罪法のその条文を読むと、「相手が不安若しくは迷惑を覚えるようなやり方でつきまとう」ことが軽犯罪法違反とされてるんです。ということは、「相手によるじゃん」ということでもあるんですよね。

中川 親告罪ってこと?

外山 親告罪であるかどうかは知らないし、たぶん親告罪ではないと思うけど、「不安」とか「迷惑」とか被害者側の主観でしかないような文言が入ってることは事実なんで、警察としてもまず当事者に「不安ですか? 迷惑ですか?」って確認しないと立件のしようがないはずでしょ。

中川 被害届が必要ってこと?

外山 いや、被害届という形式まで踏む必要があるかどうかはともかく、口頭であれ何であれ、いったんは被害者側が「不安だ、迷惑だ」って「感じてる」ことを確認する段階が必要なはずだってこと。
 で、こっちとしては相手が「不安若しくは迷惑を覚える」かどうかは、実際やってみないと分からないことなんで、警察もいきなり逮捕するわけにはいかないだろう、まず「相手が不安だ、迷惑だと云ってますよ」とこっちに通告する手続きが必要で、それが「警告」ってことですよね。被害者側の主観の問題が条文に入ってる以上、それを確認して「相手が不安・迷惑と云ってるんで、これ以上やるなら摘発しますよ」と加害者側に伝える手続きが絶対に必要になる。いきなりの逮捕はありえない。
 結論としては、山之内クンの選挙カーを引き続き追尾すれば次は逮捕かもしれないけれども、同じ鹿児島1区の中でも別の候補者の選挙カーを追っかけるぶんには、その候補者は山之内クンと違って気の強い人かもしれないし(笑)、「不安若しくは迷惑を覚える」かどうか、実際に追っかけてみないと分かんないじゃないですか。警察が相手側にそれを確認してまた別の案件として警告を出してくるまでは追っかけることができる、つまり警告されるたびに相手を変えれば絶対に逮捕されることはあり得ないと思った。

中川 相手がイヤだと云えばやめるという。

外山 うん、非常に紳士的な(笑)。だってこっちはただ原発問題について啓発する活動をおこなってるだけで、まさか相手に「不安若しくは迷惑」を覚えさせるつもりなんか、ツユほどもないわけですから(笑)。

中川 だんだん人が信じられなくなってくる(笑)。

外山 まあ原発推進の候補者なんかいくらでもいるんで(笑)、こっちもいくらでもやれるってことです。「威力による選挙妨害」という公選法違反については被害者側の主観はあまり関係なくて警察の判断で警告できそうだから、さっきも話したように、少なくとも同一県内では繰り返せないけど。

会場 判例とかはどうなってるんですか?

外山 いやあ、そこまではちょっと……。だって事前に確認しとこうと思って、公選法の条文をしっかり読んだつもりで肝心の「威力によって」って文言を読み飛ばして、「よし、大丈夫だ!」とか云ってたぐらいだから(笑)。

会場 判例とはまた違いますが、公選法の通常の運用の仕方だと、選挙期間中に逮捕するってことはまずありえないんですけどね。選挙ポスターを破るとか、そういう露骨な選挙妨害なら別ですけど。

外山 でもそれは候補者や運動員の話でしょ。選挙期間中に候補者や運動員を、実際に有罪にできるかどうかも分からないケースで逮捕してたらそれこそ警察による選挙妨害になりかねない。だけどぼくらは選挙に出てるわけじゃないから、そこまで手厚い人権保障は期待できない。

会場 候補者にいたっては、警察が候補者に話しかけること自体が選挙の自由妨害と見なされるんで、何かあっても候補者じゃなく選対の事務局長とか、候補者以外のスタッフに警察から連絡が入る。ぼくも実は、ある公職選挙法違反の候補者の運動員をやっていたもので……。

外山 そのへんの話には詳しいよね。これまた知らない人のために説明しとくと、今コメントしてくれた彼は以前、福岡でぼくらが仲良くしてる「維新政党・新風」っていう恐ろしい極右組織のメンバーで(笑)、今は東京支部のメンバーなんですが、福岡にいた時に本山貴春君というやはり新風のメンバーが市議選に出て、彼がその選対本部長をやってたんです。
 で、その本山君が選挙違反で書類送検された
(この件について『デルクイ02』に本山氏本人が寄稿)。というのは、みなさんはネット選挙はまだ解禁されてないと思ってるでしょうが、実はそんなことはないんです。選挙期間中にブログを更新してはいけないとか何とか、そういうのは単に総務省の見解というに過ぎなくて、司法判断はまだ一度も出てないんです。やってみなきゃ分からない問題で、だから本山君は市議選の期間中にブログを更新し続けたことはもちろん、ツイッターも続けてたし、なんとユースト生中継まで毎日やってた(笑)。
 それで選挙が終わってから書類送検されたんですが、警察が立件しただけではまだ有罪確定ではありませんからね。最終的には検察が不起訴の判断をして、本山君はお咎めナシになった。したがってこの本山君の事例一つで、ネット選挙はすでに解禁されたと考えて間違いないんです。本山君の件は報道もされてますから、マスコミも知らないはずはないのに、知らん振りをしている。

会場 さっきの話ですけど、警察は選挙事務所にも電話をかけてこない。事務所にかけたら候補者本人がいるかもしれないから、候補者が電話に出て「本人です」と云った時点で「選挙の自由妨害」になりかねないんで、ネット選挙に対する警告も、事務所じゃなくて選対本部長であるぼくの携帯にかかってくるんです(笑)。

外山 しかし関係ないけど、警察は東野君の名前をちゃんと把握してたよね。

東野 鹿児島で免許証を提示しましたから。

外山 うん。だから県警間の連携も一応、少しはあるんだよね。ぼくは少なくとも6日目の時点では東野君の名前をツイッターとかで出してないんだけど、鹿児島の次の日に宮崎で東野君が警察に囲まれた時は、警察は最初から東野君の名前を知ってた。ただたぶん書面で連絡を受けただけで、「ヒガシノ」なのに宮崎の警察は「トウノくん、トウノくん」って呼びかけてた(笑)。

東野 失礼な話だ。ぼくはトウノではないんで話しかけられても無視してたんです(笑)。

外山 ぼくが公選法違反で警告されて、その後も東野君はずっと追尾を続けてて、ぼくもそれに追いつこうと連絡取り合いながら追っかけてるうちに、さっきも云ったように宮崎では土地鑑がないから何時間も追いつけなくて、まだぼくが追いつかない段階で今度は東野君も警察に取り囲まれた。それは動画では記録が残ってないんだけど、静止画と音声だけ残ってるんで、これも後でちょっと見てもらいましょうか。

中川 桜子さんは今回は警察に囲まれなかったんですか?

山本 熊本で最初に取り囲まれた時だけですね。

外山 まだあんまりシビアじゃない時だね。ぼくの街宣車も一緒に囲まれて、ただ相手と引き離されただけで、「ほどほどにしてよ」って云われたっていう。

山本 次の日から他の用事で3日間、私が別行動してる間に鹿児島と宮崎でそういうことがあったらしい。

外山 ぼくがなかなか追いつけなくて、東野君が1人で選挙カーの追尾を続けてるんですね。

中川 知能犯なのに行動が行き当たりばったりだという……(笑)。

外山 さっき云ったように、音声だけなんですけどね。(8:19あたりから)

  (東野が宮崎で「軽犯罪法違反」の警告を受けている音声)
  (警察に「窓を開けなさい」と云われているのにひたすら無視している東野)
  (今回の行動を知っていたらしい通行人が撮って送ってくれた、
   東野の軽自動車が大量の警察車輛・警察官に取り囲まれている写真)

外山 こんな状況だったんですよ。これだけモノモノしいと、周りにいっぱい集まってる野次馬も、まさか容疑が「軽犯罪法違反」だとは思いも寄らないでしょうね(笑)。

中川 オウムの逃亡犯並みの扱いだよなあ(笑)。

会場 東野さんが外山さんの活動に参加し始めた頃には、こういう状況になった時に、こんなふうに警察に切り返せるような人だったんですか?

外山 切り返してないじゃないか(笑)。

会場 いや、でもたいして動じずにトボけたりとか……。

中川 トボけてる自覚はあったの?

東野 まず鹿児島で1人で取り囲まれた時には正直云ってビビってたんですけど、宮崎の時は思考停止してましたね(笑)。とりあえず黙ってようってことだけ考えて。

山本 この翌々日に私が再合流したら、東野が「なんで今回の行動が楽しいのか分かった。人と喋らなくていいからだ」とか云ってました(笑)。

外山 普通の運動は人と話してナンボだからね。

中川 性格の暗い人に向いた運動ですね(笑)。

東野 たぶんそうです。少なくともぼくには向いてましたね。

中川 それでもそこらへんの女性につきまとうより、悪い奴につきまとった方がよっぽど正義ですからね(笑)。
 みなさんもたぶんご存じの、赤軍派の塩見孝也さんという方がいますが、あの人には周囲の親しい人全員が迷惑をかけられています(笑)。奥さんも、友人の1人であるぼくも迷惑をかけられている。あの人はそういう人なんです。あの人は存在論的に迷惑な人なんです。「人に迷惑をかける」という星の下に生まれて来た人なんです。神様はそういう人もつくるんです。だから彼に「迷惑をかけるな」と云ってもしょうがない。塩見さんの迷惑は神の御心なんだから、文句を言ったらバチが当たります。
 問題は使い方なんです。われわれが考えなければいけないのは、塩見さんのもって生まれた迷惑をどう革命に活用するか、なんです。若い頃の塩見さんの迷惑は国家権力に向いていた。国家権力にさんざん迷惑をかけた。だから彼は革命家として称えられたんです。「友だちとしては迷惑な奴だけど、革命家としては偉大だ」ということになったんです。迷惑も相手が国家権力なら偉大な戦いになるんです。重要なのは相手なんです。
 今回の「つきまとい行為」というのも、キャバクラのオネエチャンか何かを追いかけ回してたらただの迷惑な人だけど、こんなふうに政治家の選挙カーを追い回してれば「ちょっと正義かな?」って気がしてくる。そこらへんも、みなさんが今後さまざまの闘いを組み立てる時に参考にしていただきたい。
 どんなに卑劣な行為でも、相手が悪い奴だったら許されるんです。闘争のコツでございます。ぼくが中核派と闘ってた時にも、ぼくは実は個人的な、プライベートな動機で闘ってたんだけど、法政の学生たちは、「あの極悪な中核派と闘ってるんだから中川は正義の人なんだ」と勝手に思ってくれる(笑)。人生ってそういうものです。

外山 山本桜子はさっきの熊本の、「渡辺喜美からカネもらってんのか」の名台詞が飛び出した日まではいたんだけど、その後3日間、所用で別行動してて、だから鹿児島と宮崎では東野君は1人で警察に取り囲まれてたのね。で、また8日目に合流するんだけど、そしたら東野君の性格が変わってたと証言しています(笑)。

山本 やたらと強気になってましたね。ドライビング・テクニックも上達してて。

外山 前は相当危なっかしかったもんね。

山本 今回の行動の前に一度、東野の運転で街宣車でドライブしたことがあるんですけど、とても怖かった。

外山 やっぱり一度警察に取り囲まれてみるっていう経験は重要だ(笑)。

中川 国家権力というのは抽象的なものではなく具体的なものなんだってことを、みなさんも早めに経験して理解した方がいいです。

外山 彼らがどこまでやれるのかってことも、だんだん分かってくるしね。

中川 そりゃあ警察は非常に強力な権限を持ってますよ。人を閉じ込めることができるんだから。だけどそれにも期限というものがあるし、閉じ込めてる間もメシは3食出してくれるし、拷問とかしないし(笑)。ビックリしたよ、劇画の世界とは違うなあって。

外山 まあ我々は多少、政治的背景のある人間だと思われてるから手荒にされないという側面もあるのかもしれないけどね。

中川 それはあるかも。公安事件だと、看守の人たちも下手なことしたらすぐ弁護士が来ると思ってるから。だからもしパクられた時は公安事件にしちゃった方が得です(笑)。

外山 実際は単なる一般刑事犯的な事件であったとしてもね。

中川 そういえば学生時代に私の知り合いで居酒屋でサラリーマンと喧嘩して公安事件になった奴がいましたね。相手のサラリーマンを殴る時に「てめえー、中核ー、殲滅だー」とか云ったら、公安刑事が飛んできたんだって、内ゲバ事件かと思って(笑)。

外山 その人は単に酔った勢いで「中核派め」とか云ってただけなんだ。

中川 うん。法政では「馬鹿野郎、コノ野郎」ぐらいの意味ですよ(笑)。

外山 計算ずくで云ってたわけでもなく……。

中川 法政の場合、人に喧嘩を売る時は「おまえ、中核だろう」と云うことになってる。そういう作法があるんです。学生手帳にも書いてあったと思う、20年以上も前のことでよく覚えてないけど(笑)。とにかく、ただの酔っぱらいの喧嘩でも相手が中核派だと公安事件になる。部署が変わるんですね。

外山 ぼくは前科三犯なんだけど、まあ3つとも表面的にはただの一般刑事犯だからね(笑)。表面的には、ですけど。
 で、最初に捕まった時もやがて拘置所に入れられて、まず独房の期間が長かったんだ。それはもちろん政治的背景のある人間だからっていうんではなくて、接見禁止がついてたからだろうけど、ともかく半年ぐらい独房暮らしだったから、読書三昧の日々にすっかり慣れちゃった。だけど接見禁止が切れてしばらくしたら雑居房に入れられそうになって、すごく困ったの。すっかり人とコミュニケーションとれなくなってる自覚があったから、すぐイジメに遭いそうだなと思って、なんとか独居房にとどまれる方法はないかと考えたんだよね。
 その時に思いついたのは、「こいつは政治犯なんだ」ということを分かりやすく拘置所当局に教えてあげればいいんだってことで、具体的には、獄中者組合とか監獄人権センターとか救援連絡センターとか、そういう団体の機関紙を片っ端から購読し始めたの(笑)。そういうのを購読するのは拘置所だけではなく仮に刑務所であっても阻止できない。で、当局としてはそういうのを購読してる人を雑居房に移したりすると、そういう知識がない他の囚人にもそれを見せられちゃうかもしれないでしょ。実際もし雑居房に移されたらぼくも見せるし。そしたら囚人にもこういう権利があるとか、全部バレちゃって都合が悪いから、そういう人はやっぱり独居房に置いとくんだ。
 「政治犯」というのはそういうふうに、いろんな使い道があります(笑)。

中川 そうそう、逮捕されるなら政治犯として逮捕されたほうが得です。政治犯として逮捕されるとヒドい目に遭うと思ってる人が多いようですが、現実は逆です。政治犯がヒドい目に遭ったのは、幸徳秋水とか大杉栄とか小林多喜二の時代の話です。今は政治犯のほうが優遇されます。
 なぜかというと、政治犯はすぐ弁護士を呼ぶから。警察がちょっとでも違法な取り調べをすると、政治犯はすぐ弁護士に云う。刑事さんたちはそれがイヤなんです。だから丁重に扱ってくれます。

外山 そういう細かい知恵について話し始めるとキリがないんだけど、とにかくまあ、一度は警察に取り囲まれてみるべしと。そうすれば彼らも単なる公務員、役人でしかないってことが実感できる。東野君もいっそ捕まった方がよかったかもね。

東野 そうですね。

外山 惜しいことをした(笑)。

中川 イッヒッヒ。